ドクダミ仕事と思い出

ドクダミが好きなのは今に始まったことでは無い。一番古い思い出は、中学一年の時。北関東の片田舎から東京の私立校に入学し、はじめての寮生活が始まった頃のこと。

同室の同級生3人と寮の流しで並んで洗濯していた時の会話だったと思う。お喋りの内容は、それぞれを花に例えると何の花だと思うか?だった。多分、お題を振ったのは私で、その時に私は自分を「どくだみ」だと思う、と言ったのをはっきり覚えている。

別に自虐的な気持ちで言ったのではなく、ドクダミのハート型の葉も、真っ白な十字の花(正確には苞だが)も、みんなが嫌うあの香りも漢方薬の様で割と好きだったのだ。
地味だけれど白い花は綺麗で、葉には薬効があり、飾りにはならなくても役に立つ…。それはまだ子供だった私の願望も混じっていたかも知れないし、他の3人がそれぞれ東京か東京近郊で生まれ育ち、地方生中心の寮生の中でも都会的なメンバーだったから、その中の自分の立ち位置をドクダミに例えたのかも知れない。

それから、まだ結婚して間もない頃のこと。草取りに手が回らず、盛大に繁った庭のドクダミを見ていた近所のおばあちゃんに「こんなにドクダミが…草取りせなあかん」と、呆れられた時、(ドクダミ、可愛いのになぁ…)と、せっせとドクダミを抜いて干し、束にして「ドクダミ茶に使ってください」と持って行った事があった。サバサバして趣味の多いおばあちゃん、かなり前に亡くなられたけれど、あれは嫌味に取られたかなぁ…?その後も親しくしていただいたから、気分を害される事は無かったと思うけど、多分呆れられた気はする(笑)

そんな事を思い出しながら、庭から抜いてきたドクダミを洗う。
陰干しして、綺麗な葉を千切って消毒した保存瓶にどんどん入れていく。
あとは全部が浸かるぐらい、アルコール度数35度のホワイトリカーに漬けるだけ。ひと月もしたら、漉して入浴剤や、虫さされ用のチンキになる。

今まで干してドクダミ茶を作った事はあったが、私は皮膚も胃腸も丈夫、ニキビやむくみとも無縁だったので、あまりお茶の効果を期待する必要も無く、続けて作ったり飲む事は無かった。

最近になって、ドクダミの花のチンキから美白化粧水が作れる事、葉のチンキを作っておけば、虫さされや入浴剤に使える事を知り、今年は思い立って新たな「ドクダミ仕事」に手をつけた。

5月下旬に喉風邪から気管支炎になったのがやっと治って来た所なので、いっぺんにやらず、1回目は花を摘むだけにして、小さな保存瓶に白い花だけ詰めて化粧水用チンキを作る。庭のドクダミだし、雨の後なので洗わずにそのまま。
漬けたばかりはとても綺麗で「ハーバリウムか?」と夫が言うので、これはドクダミチンキだと説明したら複雑な顔をしていた(笑)

2回目は、ごっそり根元から庭のドクダミを抜いて、水洗いして乾かす。抜きながら見ても可愛い。葉の形も、白い花も、薬っぽい香りもやっぱり好き。先月少し草取りして減っているので、もっと沢山あれば良いのに…と思ってしまうが、何事もほどほどと思い直す。

ドクダミ嫌いな人にとっては、ドクダミを抜きたくない…と思いながら摘んでいる私は相当変人だよなぁ…と思って、また若い頃の自分を思い出して笑えてきた。

12歳の私は、自分を田舎者と思っていなかったので(田舎にも段階があって、私が住んでいたところは、山や田畑が広がる土地から見ると「町場」と呼ばれる場所だったから、田舎というのは農村部のことだと思っていた)
上京して、東京の学校のお嬢様方を始めて目にし、自己紹介で出身地名を言っただけで「田舎って感じ」と(全く悪意はない)と言われて驚き、その後も、自分が融通の利かない性格ではあってもいたって常識人だと思っていたのに、中学から一緒だった親友(彼女は寮生ではなかったが、物の捉え方に共通点があって気が合った)に「私って変人かなぁ…?」と言ったら、「えっ!自分が変人だと気付いていなかったの?」と、からかい半分に大笑いされたのを懐かしく思い出す。

半世紀以上生きて子供達もとっくに成人を過ぎてみれば、私が田舎者であったことも、変人であることも、自分の大切な要素であり、華やかでも無く、薬臭くても気に入ってくれる人も案外いるドクダミに自分を例えた12歳の私はなかなか良い所を突いていたんじゃないか…そんなことを思った。

果物やハーブを煮詰めたり、アルコールに漬ける作業は、何故か過ぎた過去があぶくの様に浮かんで来て、それが後悔ではなくて「現状肯定、過去オール善」と言った気分になるのは不思議な事である。


ちょうどいいしあわせを探して

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